トラブルを防ぐには

美容外科にまつわる患者トラブルの多くは、期待にそぐわない仕上がりになった、想定していたより多額の治療費を請求された、など法的にトラブルを解決するには判断が難しい内容が多いのが実情です。

一方これらのトラブルの多くは未然に防ぐことが可能です。例えば、仕上がりの満足度については、患者自身の主観に大きく左右されるので、医師は後々患者から訴えられないためにも、あらかじめ、患者のイメージをしっかり聞きだし、その上起こり得るケースを細かく説明した上で、患者が理解していないようならば勇気を持って手術を取りやめるようにします。一方患者側も、手術の決定について医師側に一方的にリードされないように気をつける必要があります。

中には少しでも多くの患者を手に入れたいがために、上手なセールストークを駆使する医師もいます。
その結果、きちんと納得しないままに流されるように手術を受けてしまうと、こんなはずではなかったといった仕上がりや、高額な費用に困惑することになりかねません。訴えるにしても、医師側に明らかな過失がない限り、裁判で勝ち得ることは困難な上、労力や費用を考えると結局泣き寝入りすることになってしまいます。どんな小さな手術でも体を傷つけることには変わりがありません。患者側も仕上がりや費用について起こり得る可能性を詳しく質問し、納得した上で手術に臨む責任があります。このように事前に、医師が患者に充分な説明をし、患者がそれに納得した上で医療行為に臨むことをインフォームドコンセントと呼び、自由診療の上に効果の評価が難しい美容外科では特に重要なことです。

手術のトラブル

美容外科の手術は骨を削るような大掛かりなものから、少し糸を通すだけで、顔つきを明るく変化させるような気軽なものまで広範に渡ります。以前より手術費用が安くなり、美容整形に対するハードルが低くなってきたことから、多くの人が施術を受けています。

しかし、その分期待通りの結果が得られなかったり、手術後の予後が悪かったりする訴えも増え、手術を失敗とみなして、代金返済を求める訴訟も相次いでいるのが現状です。患者の満足が得られにくいのには理由があります。美容外科の手術は、体の造形、つまり見た目をつくり上げることですので、例えば、二重瞼をつくる場合など、患者が勝手に思い描いている術後の自分の顔と、医師が目標としている顔には微妙なズレが生じるケースが多いのです。

つまりヘアサロンで、ヘアスタイルを注文する場合と同様です。モデルの写真を見せ、これと同じにしてくださいと依頼したところで、患者本人の持つ、その他の部分の形状や皮膚の質感がモデルと異なれば、ヘアスタイルだけまねても、モデルと同じにはなりません。
つまり顔の一部分だけを変えても患者が理想とする顔つきになるとは限らないのです。

その他にも、訴訟になる例としては、手術後にいつまでも炎症が治まらなかったり、体の機能が著しく低下したりするといったケースがあります。これらの場合の多くは明らかな医療行為の落ち度によるものです。

美容外科とは

美容外科では、健康かつ正常な状態の人体をより見た目に美しくするための医療を行います。見た目を良くするという点では形成外科と同じですが、施術前の状態が正常か異常かで区別されます。日本における美容外科の歴史は浅く、1978年にはじめて標榜科として認められました。

治療内容としては、豊胸、二重瞼をつくる、鼻・唇・顎・耳の修正、また皮膚のしみ・あざ・傷跡の修正や、脱毛、腋臭の治療まで、広い範囲に渡り、美容皮膚科やエステの施術内容に一部重なる治療もあります。かつては、健康な身体にメスを入れるのはいかがなものかという倫理観のもと、美容整形は人知れずこっそりと行われたものであり、実際に充分な経験のない美容外科医による手術の失敗や、多額な手術代を請求されたりするトラブルが多発したこともあり、世間のイメージはあまり良くありませんでした。

今では、大学病院にも美容外科が置かれるなどし、世間から信頼を得つつあると共に、治療も身近なものとなってきました。顔に大きくメスを入れなくとも、レーザーによるしみ取りや脱毛も、美容外科によって行われる施術であることから、美容外科へのハードルは低くなっているといえます。一般の人に美容外科が身近になり、治療が多く行われるようになると、それに比例してトラブルの発生も増えています。その背景に美容外科の治療は、客観的な効果の評価が難しいことや、美容外科医の技術にばらつきがみられることがあります。